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人事異動後の配慮希望に企業が直面する「想定外」への適切な対処法

人事担当者の皆さん、こんな状況に遭遇したことはありませんか?

4月の人事異動から3ヶ月が経過したある日、異動した社員が診断書を持参し「現在の部署では病気のため業務遂行が困難です」と申し出てきた。

このとき、多くの人事担当者が頭を悩ませるのは当然です。「異動前には何も言わなかったのに」、「診断書にはどう対応すべきか」、「法的にはどこまで配慮が必要なのか」。

企業が陥りがちな「対応の落とし穴」

よくある初期反応とそのリスク

【危険な反応1 感情的な対応】
「異動前に言うべきだった」、「今さら言われても困る」

→ リスク パワハラ認定、精神的負荷の増大、症状悪化

【危険な反応2 安易な配慮拒否】
「業務上必要な異動だから仕方ない」、「他の社員との公平性が保てない」

→ リスク  合理的配慮義務違反、労働契約法違反の可能性

【危険な反応3 過度な配慮】
「とりあえず元の部署に戻そう」、「休職させて様子を見よう」

→ リスク: 他の社員への影響、組織運営の混乱、本人のキャリア阻害

病気と職務適性の複雑な関係性

なぜ「異動後」に問題が表面化するのか

1. 潜在的な症状の顕在化

  • ストレス環境の変化により症状が悪化

  • 新しい業務内容が特定の障害と相性が悪い

  • 職場環境(騒音、照明、人間関係等)の影響

2. 本人の認識不足

  • 異動前は症状を軽視していた

  • 新環境で初めて支障を実感

  • 診断を受けるきっかけが異動だった

3. 企業側の情報不足

  • 健康診断では発見できない疾患

  • プライベートな情報の把握限界

  • 配属前の適性検討不足

これらの要因が複合的に作用し、「想定外」の事態が発生するのです。

法的義務と企業責任の正しい理解

合理的配慮の提供義務

障害者差別解消法の規定により、企業にも合理的配慮の提供が法的義務となりました。

配慮義務の範囲

  • 過度な負担にならない範囲での環境調整

  • 業務内容・方法の見直し検討

  • 職場環境の改善措置

労働契約法上の安全配慮義務

企業には従業員の生命・身体・健康を危険から保護する義務があります。病気を理由とした配慮要請を無視することは、この義務に抵触する可能性があります。

労働基準法・労働安全衛生法の視点

適切な健康管理、就業環境の整備は企業の基本的責務です。診断書による申し出は、これらの法令に基づく重要な情報提供と捉える必要があります。

「問題」を「機会」に変える

ステップ1 状況の正確な把握

医学的情報の整理

  • 診断名、症状の程度、予後の見通し

  • 業務に与える具体的影響

  • 必要な配慮事項の明確化

職場環境の分析

  • 現在の業務内容と負荷状況

  • 物理的環境(設備、レイアウト等)

  • 人的環境(チーム構成、コミュニケーション方法等)

ステップ2 配慮の可能性検討

業務調整の選択肢

  • 業務内容の一部変更・軽減

  • 勤務時間・勤務形態の調整

環境改善の検討

  • 物理的環境の調整

  • ICT技術の活用

  • コミュニケーション方法の工夫

ステップ3 合意形成と実施

本人との対話

  • 配慮内容の具体的合意

  • 経過観察の方法・頻度

  • 見直し時期の設定

職場内調整

  • 上司・同僚への適切な情報共有

  • 業務分担の再調整

  • 理解促進のための環境づくり

専門家関与の必要性と効果

なぜ「両立支援コーディネーター」が必要か

1. 中立的立場での調整

企業と労働者双方の利益を考慮した客観的判断が可能です。社内だけでは感情的になりがちな問題も、第三者の専門家が介入することで冷静な検討ができます。

2. 専門的知識の活用

  • 疾患に関する医学的知識

  • 法的要求事項の正確な理解

  • 他社事例に基づく実践的ノウハウ

  • 社会資源(医療機関、支援機関等)の情報

3. 継続的支援体制の構築

一時的な問題解決ではなく、中長期的な両立支援体制の構築をサポートします。

両立支援コーディネーターの具体的役割

【初期段階】

  • 状況の客観的分析

  • 法的リスクの評価

  • 配慮の選択肢提示

【調整段階】

  • 本人・企業間の対話促進

  • 医療機関との連携支援

【実施段階】

  • 配慮実施状況のモニタリング

  • 効果測定と改善提案

  • トラブル発生時の迅速対応

【定着段階】

  • 継続的な状況確認

  • 制度・仕組みの改善提案

  • 他の類似ケースへの応用

企業にとっての「投資対効果」

短期的効果

  • 法的リスクの回避

  • 労働紛争の予防

  • 従業員満足度の向上

中長期的効果

  • 人材定着率の向上 配慮により能力を発揮できる環境づくり

  • 組織力強化 多様性への対応力向上

  • 企業ブランド価値向上 「働きやすい会社」としての評価

  • イノベーション創出 制約条件が新たな工夫を生む

専門家選択のポイント

両立支援コーディネーターに求められる資質

1. 実務経験の豊富さ

  • 類似ケースでの支援実績

  • 企業側・労働者側双方の事情理解

  • 医療機関との連携経験

2. 法的知識の確実性

  • 最新法令への対応

  • 判例・行政解釈の理解

  • リスク評価の正確性

3. コミュニケーション能力

  • 関係者間の調整力

  • わかりやすい説明能力

  • 信頼関係構築スキル

4. 継続的支援への姿勢

  • 一時的でない長期的視点

  • 状況変化への柔軟対応

  • 改善提案の継続

「想定外」を「新たな価値創造」の機会へ

人事異動後の配慮要請は、確かに企業にとって「想定外」の出来事かもしれません。しかし、これを単なる「問題」として捉えるのではなく、組織のレジリエンス向上真の働き方改革実現の機会として活用することが重要です。

適切な専門家の支援を得ることで:

  • 法的リスクを回避しながら

  • 従業員の能力を最大限活用し

  • 組織全体の対応力を向上させ

  • 持続可能な経営基盤を構築する

ことが可能になります。

「困った時の相談相手」としてではなく、「パートナー」として両立支援コーディネーターをご活用ください。

一人の従業員への適切な配慮が、組織全体にもたらす価値は、初期投資を大きく上回るはずです。まずは現状の課題整理から始めてみませんか。あなたの会社を支援をいたします。

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