コラム column
パーキンソン病と障害年金|「病名」ではなく「体の動きにくさ」で等級が決まります。練馬区の特定社労士が解説
「まだ歩けるから」と申請をためらっていませんか
「パーキンソン病と診断されたけれど、まだ自分で歩けているし、身の回りのこともある程度は自分でできる。障害年金の対象になるほど重症ではないはず」。診断を受けた方やそのご家族から、こうしたお声をお聞きします。
実際、パーキンソン病は手足の震え(振戦)、筋肉のこわばり(固縮)、動作の緩慢さ(無動)、姿勢保持障害といった症状が少しずつ進行していく病気であるため、「まだ大丈夫」と感じてしまう時期が長く続きます。しかし、この「まだ大丈夫」という感覚が、本来請求できたはずの年金の請求時期を遅らせてしまう大きな原因になっています。
パーキンソン病の障害年金は、病名そのものではなく、実際にどの程度体の動きに制限が生じ、日常生活や仕事にどれほど支障が出ているかによって等級が判断される「肢体の障害」として審査されます。診断名や進行のイメージだけで自己判断せず、まずはご自身の状態を専門家と一緒に確認してみることをお勧めします。
パーキンソン病はどのくらいの方が発症しているのか
パーキンソン病は、加齢とともに発症率が上昇する神経変性疾患で、60歳以上の人口の中でも一定の割合で発症するとされる、決して珍しくない病気です。高齢化が進む中で、今後も障害年金を請求される方が増えていくことが見込まれる分野の一つといえます。それだけに、制度を正しく理解し、適切なタイミングで請求することの重要性は増しています。
等級の目安とHoehn-Yahr(ホーン・ヤール)重症度分類
パーキンソン病の症状の進行度を表す代表的な指標に、Hoehn-Yahr(ホーン・ヤール)重症度分類があります。ステージ1は体の片側だけに症状が出ている段階、ステージ2は両側に症状が出るものの姿勢保持は保たれている段階、ステージ3は姿勢反射障害が現れ、方向転換や立ち直りに支障が出始める段階、ステージ4は歩行や起立に介助を要することが多くなる段階、ステージ5は車椅子生活または寝たきりとなり、日常生活のすべてに介助が必要となる段階とされています。
障害年金の審査では、パーキンソン病関連疾患があり、Hoehn-Yahrの重症度分類でステージ3程度に該当し、労働に制限を受けている状態が、障害厚生年金3級の目安の一つとされています。両上肢・両下肢の機能に著しい障害があり、日常生活の多くに介護が必要な状態(ステージ4〜5に相当することが多い状態)であれば1級、一人での外出が困難、家事がほとんどできないといった状態(ステージ3〜4に相当することが多い状態)であれば2級の対象となる可能性があります。
ただし、これらのステージと等級の対応関係はあくまで目安であり、実際の審査では日常生活動作(食事、着替え、入浴、排泄、歩行など)全体の制限度合いを踏まえて総合的に判断される点に注意が必要です。
見落とされがちな「運動症状以外」の困難さ
パーキンソン病というと、震えや歩行の遅さといった「運動症状」がまず思い浮かびますが、実際には便秘や立ちくらみといった自律神経症状、抑うつや意欲低下、睡眠障害、そして進行すると認知機能の低下(パーキンソン病認知症)といった「非運動症状」も、生活の質を大きく左右します。これらの非運動症状は、診断書の運動機能の項目だけでは十分に反映されないことがあるため、日常生活全体にどのような影響が出ているかを、申立書などを通じて別途具体的に伝える必要があります。
初診日の考え方と保険料納付要件
障害年金を請求するには、パーキンソン病の症状で初めて医療機関を受診した日(初診日)を特定し、その前日時点での保険料納付要件を満たしている必要があります。パーキンソン病は、初期には「手の震えが気になって内科を受診した」「なんとなく体が動かしにくくて整形外科にかかった」など、専門医(神経内科)を受診する前に別の診療科を受診しているケースが多く見られます。この最初の受診日が初診日として扱われるため、古い受診歴を正確に振り返って整理しておくことが重要です。
進行性の病気だからこそ知っておきたい「事後重症請求」
パーキンソン病は緩やかに進行する疾患であるため、初診日から1年6か月が経過した障害認定日の時点では等級に該当しなくても、その後症状が進行して生活や就労への支障が大きくなった時点で改めて請求できる「事後重症請求」という制度があります。
たとえば、障害認定日の時点ではステージ2程度で3級にも該当しなかった方が、数年後にステージ3〜4まで進行した場合、その時点で改めて請求することで受給につながる可能性があります。この仕組みを知らずに、「最初の申請で該当しなかったから、もう年金はもらえない」と思い込んでしまう方が少なくありませんが、それは誤解です。進行に応じて、請求のタイミングを柔軟に見直していく視点を持つことが大切です。
診断書に表れにくい「オン・オフ現象」「ウェアリング・オフ」の伝え方
パーキンソン病の治療では、レボドパをはじめとする薬物療法が中心となりますが、治療を続けるうちに、薬の効果が続いている時間帯(オン)と、その効果が切れて症状が強く出る時間帯(オフ)との差が大きくなる「オン・オフ現象」や、薬の効果持続時間が短くなる「ウェアリング・オフ現象」が現れることがあります。診察がたまたま「オン」の状態のタイミングで行われると、その時だけを見た医師には症状が軽く見えてしまい、実際の生活の困難さが診断書に正確に反映されないことがあります。1日の中でどの時間帯にどのような症状が出て、何ができなくなるのかを具体的に記録し(できれば1週間分程度のメモや簡単な日誌の形で)、診察のたびに医師にきちんと伝えることが、適正な等級評価につながる重要なポイントです。
よくあるご質問
Q. 働きながらでも申請できますか。
働いていることは、直ちに不利になるわけではありません。ただし、どのような配慮を受けながら、どの程度無理をして働いているかという実態が重要な判断材料になります。
Q. 診断されたばかりでも申請できますか。
初診日から1年6か月が経過していない場合、原則として障害認定日での請求はできませんが、症状によっては将来的な事後重症請求に備えて、早い段階からご相談いただくことをお勧めします。
Q. 一度不支給になったら、もう請求できませんか。
できます。事後重症請求や、不支給決定に対する審査請求(不服申立て)など、状況に応じた選択肢があります。
社労士事務所アシストにご依頼するメリット
当事務所では、Hoehn-Yahrの重症度分類や日常生活動作の制限度合いをもとに、症状の進行段階を丁寧に伺ったうえで、障害認定日での請求と事後重症請求のどちらが適切かを見極めます。あわせて、オン・オフ現象や非運動症状による生活上の困難さが診断書・申立書に正確に反映されるよう、医師への情報提供文書の準備も含めてサポートいたします。進行性の病気だからこそ、「まだ早いかもしれない」と迷っている段階でも、まずは早めのご相談をお勧めします。
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