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海外在住・海外滞在中に初診日がある場合の障害年金|受給できる人・できない人を特定社労士が解説
「海外赴任中に病気になった」、「留学中に体調を崩し、現地の病院にかかった」、「海外に移住した後に発症した」。このようなとき、日本の障害年金は請求できるのでしょうか。
結論から言うと、海外で初診を受けていても、障害年金を請求できる場合があります。国籍や居住地ではなく、初診日にどの年金制度に加入していたかで判断されるためです。一方で、海外にいた期間は年金の加入状況が複雑になりやすく、受給できる人とできない人がはっきり分かれます。
この記事では、障害年金を専門に扱う特定社会保険労務士が、海外で初診日がある場合のポイントを解説します。
1. 海外で初診を受けても請求できるのか
障害年金の要件は、国民年金法第30条などで定められています。具体的には、初診日、保険料の納付、障害の状態の3つです。この中に、国籍や現在の住所地は含まれていません。
また、初診の医療機関が日本国内か海外かは、直接の問題ではありません。日本国籍の方であれば、海外の初診日でも、要件を満たせば日本の障害年金を請求できます。
ただし、請求できるのは、原則として初診日の時点で日本のいずれかの公的年金制度に加入していた場合に限られます。この点が、海外初診のケースで最も重要です。
2. 分かれ目は「初診日の年金加入状況」
障害年金の種類は、初診日にどの制度へ加入していたかで決まります。
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初診日に国民年金に加入していた場合は、障害基礎年金の対象です。
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初診日に厚生年金に加入していた場合は、障害厚生年金の対象です。
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初診日に、日本のどの年金制度にも加入していなかった場合は、原則として対象外です。ただし、20歳前や、60歳以上65歳未満で日本に住んでいた期間など、例外があります。
海外に出ると、住民票や勤務形態によって、この「加入しているかどうか」が変わります。次の章で、典型的なケースを整理します。
3. ケース別の受給可否
| 海外にいた状況 | 初診日の年金加入 | 障害年金の可能性 |
|---|---|---|
| 日本の会社に在籍したまま海外赴任・出向(厚生年金を継続) | 厚生年金に加入中 | 請求できる可能性が高い |
| 短期の旅行・出張・留学で、住民票を日本に残している(20歳以上60歳未満) | 国民年金(第1号など)に加入中 | 請求できる可能性が高い |
| 海外に転出(国外転出届を提出)し、国民年金に任意加入している | 国民年金に任意加入中 | 請求できる可能性がある |
| 海外に転出し、国民年金に任意加入していない | どの制度にも未加入 | 原則として対象外 |
| 現地の会社に採用され、日本の厚生年金には加入していない | 日本の制度に未加入 | 原則として対象外 |
日本の会社から海外へ派遣されている場合
日本の会社に在籍したまま海外へ赴任し、厚生年金の資格が継続している場合は、初診日に厚生年金に加入していることになります。この場合は、障害厚生年金の対象です。
一方、現地法人に新たに採用された場合や、日本の会社を退職して渡航した場合は、日本の厚生年金に加入していない可能性があります。「海外赴任」と一口に言っても、雇用関係や加入状況はさまざまです。年金記録の確認が欠かせません。
留学・短期滞在で住民票を残している場合
国民年金は、日本国内に住所がある20歳以上60歳未満の方に加入義務があります。留学や長期の旅行でも、住民票を日本に残していれば、国民年金の加入者のままです。この場合は、通常どおり障害基礎年金を請求できる可能性があります。
住民票を抜いて海外へ転出した場合
住民票を抜いて海外に転出すると、国民年金の加入義務がなくなります。保険料を納める義務もなくなります。任意加入の手続きをしていないまま初診日を迎えた場合は、残念ながら障害年金を請求できません。
学生が海外留学に際して、手続きの流れで住民票を抜いてしまうケースがよくあります。出国前の手続きが、将来の障害年金を左右することがあります。
4. 国民年金の任意加入とは
海外に転出したあとも、日本の年金制度への加入を続けたい場合は、「国民年金の任意加入」という制度があります。
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日本国籍を持ち、海外に住んでいる20歳以上65歳未満の方が対象です。
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加入の手続きは、お住まいの市区町村の窓口や、日本年金機構を通じて行います。
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過去にさかのぼって加入することはできません。
任意加入していれば、海外在住中に初診日があっても、障害基礎年金の対象になります。ただし、後述する納付要件を満たす必要があります。
これから海外へ長期滞在や移住をされる方には、ぜひ知っておいていただきたい制度です。障害年金に限らず、将来の老齢年金にも関わる大切な選択です。
5. 保険料納付要件と合算対象期間
海外初診のケースでも、保険料納付要件を満たす必要があります。
原則の納付要件
初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と免除期間を合わせて3分の2以上あることが必要です。
海外にいた期間の扱い
日本人が海外に居住していた期間で、国民年金に任意加入しなかった期間は、「合算対象期間(カラ期間)」として扱われます。納付要件を判定するとき、この期間は被保険者期間に含めず、分母から除外して計算します。
たとえば、国内で10年間保険料を納め、その後に海外で5年間任意加入しなかった場合、判定では海外の5年を除いて考えます。このため、海外にいた期間が長くても、それだけで納付要件に不利になるわけではありません。
注意したいのは、任意加入をして、保険料を納めなかった期間がある場合です。この期間は未納として扱われます。任意加入をした以上は、保険料の納付が必要です。
6. 直近1年要件の特例
納付要件には、救済措置があります。初診日が令和18年3月末日までにあるときは、次のすべてに該当すれば、納付要件を満たすものとされています。
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初診日において65歳未満であること
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初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの直近1年間に、保険料の未納期間がないこと
この特例は、もともと令和8年3月末までの措置でしたが、年金制度改正によって10年間延長されました。海外にいた期間は、任意加入をしていなければ、未納期間ではなく加入義務のない期間として扱われます。そのため、直近1年が海外滞在で未加入だった場合は、要件を満たす場合があります。
ただし、実際の判定は、年金記録、出入国の時期、住民票の状況、任意加入の有無などによって異なります。ご自身で判断せず、年金事務所での記録確認や、専門家への相談をおすすめします。
7. 初診日の証明が難しい理由と対処法
海外初診のケースでは、初診日の証明が最大の課題になります。
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医療機関が外国語でカルテを作成している
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医療制度が日本と異なり、「受診状況等証明書」のような書式がない
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数年以上前の受診で、カルテの保存期間が過ぎている
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医療機関が閉院している、または連絡がつかない
対処法の例
まず、海外の医療機関に直接証明を依頼する方法があります。診察記録、診断書、領収書、保険会社への請求書類などが、証明の資料になります。
次に、帰国後に最初に受診した日本の医療機関で、証明書を取得する方法もあります。初診時の問診で「海外で診療を受けた」と申告していれば、カルテに記録され、受診状況等証明書に反映されることが多いためです。ただし、カルテの記載だけでは、海外での受診日を確定できない場合もあります。
そのときは、診察券、旅行・渡航の記録、海外旅行保険の請求資料など、補強できる資料をあわせて整えます。
初診日の特定が難しくても、諦める必要はありません。複数の資料を組み合わせて、時系列を整理することで、証明できる場合があります。
8. 外国の医療機関で書類を作成してもらうとき
日本年金機構は、外国の医療機関に作成を依頼する場合に使える、英字版の様式を用意しています。診断書、受診状況等証明書、病歴・就労状況等申立書の英字版があります。
外国語で作成された書類を提出する場合は、原則として日本語訳を添付します。翻訳者の氏名や、翻訳した日付などを記載します。
書類を依頼するときは、次の点に注意します。
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日本の障害年金の目的や、診断書で見てほしい項目を英語で簡潔に説明する
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必要な記載項目(初診日、診断名、症状の経過、現在の状態)が、漏れなく書かれているか確認する
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国によって、作成に時間がかかる、費用がかかる場合がある
海外の医師は、日本の障害年金の審査基準を知らないことがほとんどです。書類の依頼文や、記載してほしい項目の整理は、早めに準備することが大切です。
9. 帰国後・海外在住中の請求と受給
帰国後に請求する場合
帰国後は、日本の年金事務所や街角の年金相談センターで、通常どおり手続きができます。帰国後に通院している日本の医療機関で、現在の診断書を取得します。初診日が海外にある場合は、海外の受診内容と、帰国後の受診状況を整理して申請します。
海外在住のまま請求する場合
海外に住んだまま、障害年金を請求することも可能です。日本の年金事務所へ、郵送などで書類を提出します。
ただし、海外の医療機関が作成した診断書を使う場合は、日本の診断書様式への記載依頼、英字版の様式の利用、日本語訳の添付などが必要です。書類の往復に時間がかかるため、余裕をもって準備します。
受給が始まったあとの注意
受給中の方が海外へ転居する場合は、日本年金機構へ住所変更の届出が必要です。受給は継続でき、海外の口座などへの送金も可能とされています。更新の診断書(障害状態確認届)の提出も続きます。
令和8年5月15日には、厚生労働省が障害状態確認届の取り扱いについて、一部改正を日本年金機構へ通知しました。更新時の運用は変わることがあるため、最新の情報は日本年金機構の案内で確認してください。海外在住の場合は、書類が届くまでの時間にも注意が必要です。
10. 社労士事務所アシストに依頼するメリット
海外初診のケースは、国内だけで完結する申請より、確認事項が多くなります。当事務所では、次のようなサポートを行っています。
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年金加入状況の整理
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納付要件の検討
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初診日の証明資料の収集支援
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書類の翻訳・様式の案内
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診断書・申立書の作成支援
「海外で発症したから無理」と諦めてしまう前に、ぜひご相談ください。
11. よくある質問
Q. 海外の病院にかかった日が初診日でも、請求できますか?
A. 請求できる場合があります。ただし、その日に日本の年金制度に加入していたことが前提です。
Q. 海外赴任中、会社の厚生年金は続いていますか?
A. 日本の会社に在籍したまま派遣された場合は、継続していることが多いです。現地法人に採用された場合などは異なるため、年金記録の確認が必要です。
Q. 海外に転出する前に、やっておくべきことはありますか?
A. 国民年金の任意加入が有効です。加入していれば、海外在住中に初診日があっても、障害基礎年金の対象になります。
Q. 海外にいた期間は、納付要件で不利になりますか?
A. 任意加入していない期間は、合算対象期間として扱われます。納付要件の判定では、被保険者期間に含まれません。
Q. 外国の医療機関の書類は、日本語に訳す必要がありますか?
A. 外国語の書類を提出する場合は、原則として日本語訳の添付が必要です。
Q. 外国籍の方でも、請求できますか?
A. 国籍は要件に含まれていません。ただし、初診日に日本の年金制度へ加入していたかどうかが重要です。母国の医療機関を最初に受診していた場合は、その日が初診日になる可能性があります。
Q. 初診日の記録が見つからない場合は?
A. 複数の資料を組み合わせて証明できる場合があります。諦めずにご相談ください。
海外で発症した方の障害年金も、アシスト社労士事務所へ
海外赴任中、留学中、海外移住後など、状況によって、障害年金の可否は大きく変わります。そして、判断を誤ると、受給できるはずの年金を逃してしまうこともあります。社会保険労務士事務所アシスト海外初診のケースを含めて、初診日の確認から書類作成、提出、不服申立てまでをサポートします。
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