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乳がんでも障害年金は受け取れる?抗がん剤治療・再発転移・仕事への影響を練馬区の社労士が解説

 乳がんの手術を終えても、治療が終わったとは限りません。抗がん剤治療や放射線治療、ホルモン療法などを続けながら、仕事や家事、育児、介護に向き合っている方もいます。「治療前と同じように働けない」、「休職が長引き、収入が心配」、「日常生活の負担を家族に頼るようになった」。そんなとき、障害年金を検討したことはありますか。

 乳がんも障害年金の対象になり得ます。 ただし、乳がんと診断されたこと、手術を受けたこと、治療を続けていることだけで受給が決まるわけではありません。がんや治療によって生じた障害の状態に加え、初診日や保険料の納付状況などを確認する必要があります。日本年金機構の認定基準では、転移の有無や治療効果、具体的な日常生活の状況などを踏まえ、総合的に判断するとされています。

 この記事では、乳がんで障害年金を考える際に知っておきたいポイントを、練馬区の社労士事務所アシストが解説します。「自分の場合は対象になるのだろうか」と迷っている方が、最初に何を確認すればよいか分かるよう、順を追ってお伝えします。

乳がんで対象になる状態

 障害年金は、病気やけがによって生活や仕事に制限が生じた場合に、現役世代の方も含めて請求できる公的年金です。乳がんの場合、確認するのは病名だけではありません。がんそのもの、転移した病変、治療の影響などによって、現在の生活と仕事にどのような支障が生じているかが重要になります。

 日本年金機構の「悪性新生物による障害」の認定基準は、障害を大きく三つの観点から捉えています。一つは、原発巣や転移巣による局所の障害。二つ目は、がんそのものによる全身の衰弱や機能障害。三つ目は、がんの治療に伴って生じる全身の衰弱や機能障害です。検査結果だけでなく、治療の経過と実際の暮らしぶりを合わせて確認します。

例えば、次のような事情があれば、障害年金の要件を確認するきっかけになります。

  • 治療による強い倦怠感などが続き、家事や外出、勤務に大きな制限がある。

  • 再発や転移によって体力が低下し、日中も横になって過ごす時間が増えた。

  • 手術や治療後の機能障害によって、腕を使う作業などに支障がある。

  • 休職や勤務時間の短縮、仕事内容の変更が必要になった。

  • 身の回りのことを行う際に、家族などの助けが必要になった。

 これらは「当てはまれば必ず受給できる」という一覧ではありません。一方で、「通院できているから」「少しは働けているから」という理由だけで、ご自身の可能性を否定する必要もありません。認定では、症状と生活・労働への影響を具体的に見ていきます。

抗がん剤治療中の場合

 「抗がん剤治療中は、まだ申請できないのでしょうか」というご相談があります。治療中であること自体を理由に、障害年金の検討から外す必要はありません。認定基準では、がんに対する治療の結果として生じる全身衰弱や機能障害も、確認すべき状態に含まれています。

 大切なのは、治療を受けている事実だけでなく、その影響がどの程度、どのくらい続き、生活や仕事を制限しているかです。「治療翌日はほとんど動けない」、「買い物に行くと、その後は休まなければならない」「出勤日数を減らした」といった状況は、治療経過と合わせて整理しておきましょう。

 一方で、抗がん剤を使用していれば自動的に一定の等級になる、という仕組みではありません。診断書などの資料に基づき、障害の状態が認定基準に該当するか判断されます。

手術後に不自由が残る場合

 乳がんの手術後、以前とは違う身体の状態で生活している方もいます。ただし、乳房の切除という手術名だけで障害年金の受給が決まるわけではありません。がんそのものや治療の結果による機能障害がある場合には、その内容や程度、日常生活と仕事への影響を確認する必要があります。日本年金機構の基準も、がんや治療によって生じた障害について、該当する認定要領を踏まえて判断するとしています。

 例えば、仕事で必要な動作が難しくなった場合には、「何の動作が」、「どの程度」、「どれくらいの頻度で」難しいのかを具体的に整理しましょう。「以前と同じ仕事を続けている」という方でも、担当業務の変更や周囲の援助によって働けている場合があります。その実態まで含めて伝えることが大切です。

再発・転移がある場合

 再発や転移が分かったとき、将来の生活への不安が一気に大きくなることがあります。障害年金の認定では、転移の有無も確認事項ですが、転移があれば必ず受給できる、転移がなければ対象にならない、という単純な判断はしません。検査結果、病状の経過、治療の効果、現在の日常生活の状況などを総合的に確認します。

 最初の治療時には障害年金の基準に該当しなかったとしても、その後、病状が悪化した場合には「事後重症による請求」を検討できることがあります。過去に相談して難しいと言われた方も、現在の状態が変わっているなら、改めて要件を確認する意味があります。

申請で重要な3つの確認

 症状が重くても、申請に必要な制度上の要件を満たしているかは別に確かめなければなりません。乳がんの障害年金を考える際は、次の三つを順番に確認します。

1.初診日はいつか

 初診日とは、障害の原因となった病気について、初めて医師の診療を受けた日です。乳がんの確定診断日や手術日と、必ずしも同じではありません。 初診日によって、対象となる年金の種類や保険料納付要件の判断が変わります。

 例えば、最初に気になる症状について医療機関を受診し、その後、別の病院で検査を受けて乳がんと診断された場合には、一連の受診経過を確認することになります。いつ、どの医療機関を受診したか。紹介状はあったか。診断から治療まで、どのように病院が変わったか。覚えている範囲で書き出しておくと、確認の出発点になります。

 通常、初診日の証明には、初診時の医療機関が作成する受診状況等証明書などを用います。昔の受診で証明が難しい場合にも、一定の資料による確認方法が設けられています。最初の病院の資料が手元にないという理由だけで、直ちに諦めないことが大切です。

2.初診日にどの年金に加入していたか

 初診日に国民年金に加入していた方は、原則として障害基礎年金を検討します。厚生年金に加入していた方は、障害厚生年金を検討します。障害基礎年金の対象となる等級は1級・2級で、障害厚生年金には3級もあります。そのため、同じような症状に見えても、初診日時点の加入制度によって、請求の見通しを確認する際のポイントが異なります。

 転職や退職、扶養に入った時期と、初めて受診した時期が近い方は特に注意が必要です。「診断時は会社員だった」「現在は国民年金に加入している」といった現在・診断時の状況だけではなく、初診日時点の記録を確認しましょう。

 また、障害年金には、原則として保険料の納付要件があります。未納の期間があるかどうかだけで結論を出さず、初診日を基準に年金記録を確認することが重要です。

3.いつの状態で請求するか

 障害認定日は、原則として初診日から1年6か月を経過した日です。その時点で基準に該当していたか、あるいはその後に状態が悪化したかによって、検討する請求方法が異なります。

 障害認定日時点の状態による請求が可能な場合には、当時の医療記録や診断書の確認が必要になります。一方、当時は該当せず、後に病状が悪化した場合には、事後重症による請求を検討します。事後重症請求で受給が認められた場合、年金は請求日の翌月分からとなります。今の状態について相談したい方は、請求時期を漫然と先延ばしにしないことも大切です。

状態を正確に伝えるには

 障害年金の準備では、「病名を証明すること」と「障害の状態を伝えること」の両方が必要です。乳がんについては、検査や治療の経過に加え、現在の暮らしと働き方を具体的に整理しましょう。認定基準も、認定時の具体的な日常生活状況を把握して総合的に判断するとしています。

振り返る際は、次のようなメモが役立ちます。

  • 初めて受診した時期と医療機関、その後の検査・診断・治療の経過。

  • 手術、薬物療法、放射線治療などを受けた時期と、その後の体調の変化。

  • 外出、買い物、調理、掃除、身の回りのことに生じた支障。

  • 休職、欠勤、勤務時間の短縮、配置や業務内容の変更。

  • 家族や職場の援助がなければ難しいこと。

  • 調子の良い日と悪い日の違い、休息が必要になる頻度。

 例えば、「週3日働いている」という事実だけでは、勤務時間が以前より短くなったことや、帰宅後は家事ができないほど疲れることまでは伝わりません。反対に、つらさを強調するために実際より重く書く必要もありません。できること、難しいこと、援助があればできることを、事実に沿って整理することが大切です。

 主治医に診断書を依頼する際にも、診察室では伝えきれていない生活上の困りごとがないか振り返ってみてください。医学的な診断と診断書の作成は医師が行います。社労士は、受診歴や就労・生活状況を整理し、必要な書類と申請の進め方を確認することでサポートします。

よくあるご質問

乳がんのステージが低いと対象外ですか?

 ステージだけで受給の可否は決まりません。日本年金機構の認定基準では、検査結果、転移の有無、病状の経過や治療効果に加え、具体的な日常生活状況などを総合的に確認します。

働いていたら障害年金は受け取れませんか?

 働いているという理由だけで、直ちに対象外とはいえません。ただし、実際にどのような仕事を、どのような配慮を受けて続けているか、日常生活にどの程度の制限があるかなどを確認する必要があります。初診日に加入していた年金制度によって、対象となる等級も異なります。

治療を終えた後でも相談できますか?

 相談できます。治療後も障害が残っている場合や、その後に病状が変化した場合など、確認すべき事情はさまざまです。ただし、治療を受けたことだけで受給が決まるわけではありません。初診日、認定時期、現在の障害の状態を整理して検討します。

まだ申請するか決めていません。相談する意味はありますか?

 あります。申請を決める前に、初診日、年金加入記録、治療経過、現在の生活や仕事への影響を整理すれば、何が分かっていて、何を確認する必要があるかが見えてきます。結果を先に決めつけず、判断材料をそろえることが第一歩です。

弊所へのご相談

 乳がんの治療を受けながら、昔の受診歴を調べ、年金記録を確認し、これまでの経過を一から文章にするのは容易ではありません。特に、複数の医療機関で治療を受けた方や、働き方が段階的に変わった方は、「どこから手を付ければよいのか」と戸惑うこともあるでしょう。

 ご相談では、初診日や年金加入状況、治療経過、生活・就労への影響を一緒に整理し、請求に向けて確認すべき点を明確にしていきます。

 「休職しているが、申請できるか分からない」、「治療の影響が診断書に伝わるか心配」、「最初に受診した病院が今の病院と違う」。そうした段階からでも構いません。

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