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発達障害の障害年金。「IQが高いから無理」、「フルタイムで働けているから無理」は誤解です

発達障害の審査は、知能の高さではなく「対人関係・社会性の困難さ」で判断される

 発達障害(自閉スペクトラム症、ADHDなど)で障害年金を検討する際、「知能検査の結果が高いから対象にならないのでは」「一応仕事はできているから難しいのでは」と、申請前に自分で判断して諦めてしまう方が少なくありません。しかし、これは審査の実際の仕組みとはズレた思い込みです。

 厚生労働省の障害認定基準には、発達障害について「たとえ知能指数が高くても、社会性やコミュニケーション能力の障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことができず、日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定を行う」と明記されています。つまり、知能検査の数値そのものではなく、対人関係や社会生活でどれだけ困難を抱えているかが判断基準になるのです。この記事では、発達障害の申請で特に論点になりやすいポイントを整理します。

論点1:初診日の考え方が特殊になりやすい

 発達障害は先天的な脳機能の特性とされますが、障害年金制度上の「初診日」は、あくまで「発達障害の症状によって初めて医師の診察を受けた日」を指します。ここで実務上、次のようなケースが頻繁に問題になります。

・子どもの頃から特性があったが、実際に医療機関を受診したのは成人後だった

・子どもの頃に「不登校」など別の主訴で通院した記録があり、それが発達障害の初診として扱われるかどうかが争点になる

・幼少期の受診記録(母子手帳、療育記録、学校の所見など)は残っているが、医療機関の受診記録自体が見当たらない

 初診日がいつになるかによって、保険料納付要件の判定や、加入していた年金制度(国民年金か厚生年金か)が変わるため、この整理を誤ると受給できるはずの年金が受け取れなくなることもあります。

論点2:知的障害を伴う場合は療育手帳との関係も考慮される

 知的障害を伴う発達障害の場合、療育手帳の判定区分も参考情報として考慮されます。ただし、療育手帳がない、あるいは判定区分が軽い場合であっても、発達障害の症状そのものによって日常生活に著しい制限が生じていれば、1級・2級として認定される可能性は残されています。療育手帳の有無や区分だけで結果が決まるわけではありません。

論点3:病歴・就労状況等申立書は「出生や幼少期から」の記載が求められる

 通常の精神疾患であれば、発症からの経過を申立書に記載しますが、発達障害の場合はその特性上、出生時や幼少期の様子から記載することが求められる点が特有の論点です。幼稚園・学校での様子、対人関係のトラブル、学業や生活面でのサポートの必要性など、成長過程を通じた困難さの積み重ねを具体的に示すことが、審査上の説明力を強めます。

論点4:フルタイムで働けていても対象になり得る

 発達障害の方の中には、単純作業や決まったルーティンの業務であれば安定して勤務を続けられる方も多くいます。しかし、これは「対人関係やコミュニケーションの困難さがない」ことを意味しません。審査では、次のような実態が重視されます。

・仕事の内容が単純・反復的なものに限られているか

・職場からどのような配慮(指示の出し方、業務の切り出し方など)を受けているか

・感覚過敏(音、光、気温、匂いなど)によって生活や仕事に支障が出ていないか

・不適応行動(不登校、自傷、興奮のコントロールが難しいことなど)の有無

 「フルタイムで働けている」という一言だけでは、こうした背景にある困難さが審査側に伝わりません。

論点5:他の精神疾患と併存している場合の扱い

 発達障害と、うつ病や適応障害など他の精神疾患が併存している場合、それぞれを個別に評価して足し合わせる(併合認定する)扱いは行わず、すべての症状を総合的に判断して一つの等級を認定するという取扱いになっています。この点も、申立書や診断書の作成において混同しやすいポイントです。

専門家に相談する意味

 発達障害の申請は、初診日の特定、療育手帳との関係、出生からの経過の整理、就労実態の伝え方など、通常の精神疾患の申請よりも整理すべき論点が多い分野です。当事務所では、幼少期からの記録の集め方、初診日の特定方法、申立書での成長過程の記載方法まで、発達障害特有の事情を踏まえたサポートを行っています。「うちの子・自分の場合、そもそも対象になるのか分からない」という段階でも、まずはご相談ください。

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