コラム column
美容室・理容室の経営者の方へ―「従業員を雇う」前に知っておくべきこと、やっておくべきこと
「スタッフを採用したいが、何から始めればいいかわからない」、「助成金があると聞いたが、自分のお店でも使えるのか?」―そんな疑問を抱えながら、日々の施術と経営を同時にこなしている経営者の方はいませんか。
理・美容業は、技術職ゆえに人材が最大の経営資源です。だからこそ、採用・育成・定着のための制度を正しく整えることが、お店の安定と成長に直結します。そして、その土台となるのが就業規則の策定と雇用手続きの適正化です。
理・美容業特有の労務リスクをご存知ですか
美容室・理容室には、他の業種にはない独自の労務課題が存在します。何も整備しないまま従業員を雇い続けると、ある日突然、深刻なトラブルに発展することがあります。
よくある労務トラブルの例
・シャンプーやカラー剤による職業性皮膚炎・腱鞘炎で従業員が突然休職し、対応に困る
・「アシスタント期間中の練習は労働時間に含まれるのか」という残業代トラブル
・退職したスタッフが「有給休暇を一度も使えなかった」と未払い賃金請求をしてくる
・業務委託契約のつもりで雇っていたスタッフから雇用関係の確認請求が来る
・就業規則がないため、解雇・懲戒のルールが曖昧で、問題スタッフへの対応ができない
これらは決して他人事ではありません。常時10人未満のサロンでも、従業員がいる以上、労働基準法・社会保険法の適用を受けます。「小さなお店だから大丈夫」という認識が、最大のリスクです。
就業規則はなぜ必要なのか
就業規則とは、給与・労働時間・休暇・服務規律・懲戒などのルールを明文化したものです。常時10人以上の従業員を雇用する場合は法律上の作成・届出義務がありますが、それ以下の規模でも作成することを強くお勧めします。
理由は明快です。就業規則がなければ、「言った・言わない」のトラブルが起きたとき、経営者を守るルールが存在しないからです。
特に理・美容業では、以下のような業界特有のルールを就業規則に盛り込むことが重要です。
・技術練習・勉強会の取り扱い(労働時間か否かの明確化)
・副業・兼業・独立に関するルール(競業避止・顧客引き抜き防止)
・制服・道具・カラー剤などの費用負担のルール
・遅刻・早退・欠勤時の給与控除の根拠規定
・SNS・口コミサイトへの投稿に関するルール
・業務委託スタッフと雇用スタッフの区分の明確化
これらを曖昧にしたまま経営を続けることは、信頼関係のないまま人を雇い続けることと同じです。
就業規則を整えると「助成金」が活用できる
就業規則の策定は、国や都道府県の助成金を受け取るための重要な前提条件でもあります。適切な労務管理体制が整っていることを証明する書類として、ほぼすべての雇用関係助成金で就業規則の提出が求められます。
理・美容業の経営者が活用しやすい主な助成金をご紹介します。
キャリアアップ助成金
パートやアルバイトを正社員に転換したり、賃金を引き上げたりした際に支給されます。アシスタントをスタイリストに昇格させるタイミングに合わせて活用できるケースが多く、計画的に取り組むことで継続的な受給も可能です。
人材開発支援助成金
従業員にカット・カラー・パーマなどの技術研修を受けさせた際の費用や、研修中の賃金を助成します。スタッフのスキルアップと経費削減を同時に実現できます。
業務改善助成金
最低賃金を引き上げた際に、生産性向上のための設備投資(POSレジ・予約システムなど)を支援します。賃上げと業務効率化を同時に進めたい経営者に向いています。
助成金申請で「もらい損ね」が起きる理由
「助成金の存在は知っていたが、結局申請できなかった」という経営者の方がいらっしゃいます。その背景には、共通した理由があります。
① 申請期限を過ぎてしまう
多くの助成金は「取り組みを実施する前に計画届を提出する」ことが条件です。採用してから・賃上げしてから慌てて調べても、すでに申請資格を失っているケースがあります。
② 書類の不備で受理されない
助成金の申請書類は種類が多く、添付書類の細かいルールも複雑です。一つでも不備があると差し戻しとなり、期限切れになることがあります。
③ 就業規則・賃金台帳・出勤簿が整っていない
審査の過程で労働局による確認が入ります。書類が不備だったり、実態と一致していない場合は不支給となります。
これらのリスクを回避するために、申請前から専門家が伴走することが最も効率的です。
雇用手続きの「落とし穴」にご注意を
従業員を雇う際には、労働条件通知書の交付・社会保険・雇用保険の加入手続きなど、法律で定められた対応が必要です。「知らなかった」では済まされないペナルティが発生することもあります。
特に理・美容業では、以下の点に注意が必要です。
・業務委託契約と雇用契約の混同:実態が雇用関係であれば、形式上の業務委託契約は無効とみなされ、遡って社会保険料・残業代の支払いを求められる可能性があります
・試用期間中の解雇:試用期間中でも労働基準法は適用されます。「合わなかったから辞めてもらう」 は、正しい手続きなしには法的リスクを伴います
特定社労士だからできること
社会保険労務士(社労士)は、労働・社会保険に関する書類作成・申請代行・コンサルティングを行う国家資格者です。その中でも特定社会保険労務士(特定社労士)は、労働トラブルのあっせん代理まで対応できる資格です。
当事務所では、理・美容業の経営者様に向けて以下のサービスをワンストップで提供しています。
・就業規則の新規作成・見直し(業界特有のルールを反映したオーダーメイド)
・雇用契約書・労働条件通知書の整備
・社会保険・雇用保険の加入手続き代行
・助成金の受給可能性の診断と申請サポート
・労働トラブル発生時の対応・あっせん代理
「忙しくて労務管理まで手が回らない」という経営者様こそ、専門家に任せることで本来の仕事に集中できる環境を整えることができます。
よくあるご質問
Q. 従業員が1〜2名でも相談できますか?
はい、むしろ少人数のうちに体制を整えることをお勧めします。スタッフが増えてからルールを作ろうとすると、既存スタッフとの摩擦が生じることがあります。
Q. 今ある就業規則を見直してほしいのですが?
もちろん対応しています。インターネットのひな形をそのまま使用している場合、美容室・理容室の実態に合っていないことがほとんどです。現状の確認から丁寧に対応いたします。
Q. 助成金の申請も併せて依頼できますか?
はい、可能です。ただし、助成金申請には就業規則・賃金台帳・出勤簿などの整備が前提となるため、必要に応じて書類の見直しをセットでご提案することがあります。
まずは無料相談から
労務管理や助成金は、「後から整える」より「最初から正しく整えるほうが、時間もコストも圧倒的にかかりません。」お店のルールと制度を整えることは、スタッフが長く安心して働ける環境づくりにつながり、結果として採用力・定着率の向上をもたらします。
「何から相談すればいいかわからない」という方も大歓迎です。現在の状況をお聞きした上で、貴店に合った最適なプランをご提案します。
障害年金及び労務に関する様々なご相談を受け付けております。