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門脈血栓症と言われたら|障害年金は「診断名」ではなく「肝臓の状態」で決まります。特定社労士が解説
「門脈血栓症です」と告げられても、聞き慣れない病名で、体の中で何が起きているのか分からない。そのうえ、仕事は続けられるのか、治療費や生活費はどうなるのかと、不安が次々に浮かんでくる。
このコラムでは、門脈血栓症と障害年金の関係を、できるだけ分かりやすくお伝えします。結論を先に言うと、障害年金は診断名ではなく、背景にある肝臓の状態と、生活への影響で決まります。
門脈血栓症とは
門脈は、胃や腸、脾臓から集めた血液を肝臓へ運ぶ太い血管です。ここに血のかたまり(血栓)ができ、血流が滞る病気が門脈血栓症です。原因として最も多いのは肝硬変です。肝臓に強い瘢痕化が起こると血流が遅くなり、血栓ができやすくなります。
発症には、血流が滞ること、血液が固まりやすくなること、血管の壁が傷みやすくなることの3つが関係するとされています。
症状は、血栓の大きさや進み方で異なり、まったく自覚症状がなく、検査で偶然見つかることもあります。急に血栓ができた場合には、強い腹痛などが出ることがあります。
治療には、抗凝固薬(血液を固まりにくくする薬)やアンチトロンビン製剤などが使われます。ただし、最適な治療法や治療の期間は確立していません。出血のリスクもあるため、治療は必ず主治医とよく相談して決めてください。
障害年金の審査は「診断名」ではなく「肝臓の状態」を見る
障害年金の審査で、いちばん誤解されやすい点がここです。「門脈血栓症」という診断名がついていれば受給できる、というものではありません。逆に、診断名が一般的でないからといって、受給できないわけでもありません。
日本年金機構の認定基準では、肝疾患の対象は、慢性かつびまん性の肝疾患の結果として生じた肝硬変と、それに付随する病態です。付随する病態には、食道や胃の静脈瘤、特発性細菌性腹膜炎、肝がんなどが含まれます。
門脈血栓症は、肝硬変の経過の中で起こることが多い病態です。その場合は、肝硬変による障害として、検査成績、症状、治療の経過、日常生活の状況が総合的に評価されます。
一方で、肝硬変がなく、血液の固まりやすさなどが原因で血栓だけが見つかったケースでは、この肝疾患の基準にそのまま当てはまらない可能性があります。この場合は、他の基準を参考にして個別に判断されることになります。ご自身がどちらに当たるのか、気になる方は早めにご相談ください。
等級の考え方
肝疾患の等級は、次の2つの組み合わせで判断されます。
1つ目は、血液検査などの検査成績と、腹水や肝性脳症といった臨床所見です。異常の程度は、「中等度の異常」「高度の異常」に区分され、その数が数えられます。
2つ目は、日常生活の状態を示す「一般状態区分」です。無症状で社会活動ができる状態(ア)から、身のまわりのこともできず、常に介助が必要で終日就床の状態(オ)まで、5段階で表されます。
等級の目安は、おおむね次のとおりです。
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1級:高度の異常が3つ以上、または高度の異常2つと中等度の異常2つ以上があり、一般状態区分が「オ」に当たる状態
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2級:中等度または高度の異常が3つ以上あり、一般状態区分が「エ」または「ウ」に当たる状態
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3級:中等度または高度の異常が2つ以上あり、一般状態区分が「ウ」または「イ」に当たる状態
3級は、障害厚生年金のみの対象です。初診日に国民年金だけに加入していた方(自営業の方など)は、3級の対象にならないため、初診日にどの年金制度に加入していたかが重要になります。
また、アルコール性の肝硬変では、治療を続けていることに加えて、検査日より前に一定期間アルコールを摂取していないことが確認されます。慢性肝炎は原則として対象外ですが、上記の基準に相当する状態であれば対象となります。
診断書で確認したいこと
肝疾患では、専用の診断書(肝疾患用)を使います。診断書には、血液検査の数値、腹水や肝性脳症の有無、食道・胃の静脈瘤の状況、一般状態区分、治療の内容などが記載されます。
Child-Pugh分類は、肝硬変の重症度を示す代表的な指標です。ビリルビン、アルブミン、プロトロンビン時間、腹水、肝性脳症の5項目を点数化してA・B・Cに分類します。診断書の数値と、この分類に大きな食い違いがないかも、確認のポイントです。
検査値は、時期によって変動します。診断書に記載された数値が、日常の状態を適切に表しているか、主治医と相談しながら進めることが大切です。
数字に表れない「つらさ」をどう伝えるか
肝臓の病気は、「沈黙の臓器」と言われるように、つらさが外から見えにくい病気です。午後になると強い倦怠感で横にならないと動けない。食事の制限で外食や付き合いを控えている。通院や検査のたびに仕事を休まざるを得ない。こうした毎日は、診断書の数値の外側にあります。
審査する側が見ることができるのは、書類だけです。だからこそ、「病歴・就労状況等申立書」で、発病からの経過、仕事や家庭生活での困りごとを、具体的に書くことが大切です。1日の過ごし方、できなくなったこと、周囲の助けが必要な場面を、頻度や程度とともに書くと伝わりやすくなります。診断書の内容と矛盾がないかも確認します。
障害年金の3つの要件と手続きの流れ
障害年金を受け取るには、次の3つの要件が必要です。
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初診日要件:その病気で初めて医師の診察を受けた日(初診日)が、年金制度に加入している期間内であること
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保険料納付要件:初診日の前日の時点で、一定期間の保険料が納付(または免除)されていること。原則として、加入期間の3分の2以上の納付が必要です。現在は特例として、初診日の前々月までの直近1年間に未納がなければ満たす場合もあります(65歳未満の方が対象です)。20歳前に初診日がある場合は、納付要件は問われません。
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障害認定日要件:初診日から1年6か月を経過した日(障害認定日)に、障害等級に該当する状態であること
障害認定日の時点で請求できなかった場合も、現在の状態で請求する「事後重症請求」ができる場合があります。また、障害認定日にさかのぼって請求できるケースもあります。
手続きは、一般的に次の流れで進みます。
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初診日と受診歴の確認
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受診状況等証明書(初診の医療機関の証明)の取得
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診断書の依頼
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病歴・就労状況等申立書の作成
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年金事務所等への提出
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審査(数か月かかるのが一般的です)
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結果の通知
結果に納得できない場合は、決定を知った日の翌日から3か月以内に、審査請求(不服申立て)ができます。
障害基礎年金の年額は、令和8年度で、1級が1,059,125円、2級が847,300円です。障害厚生年金は、報酬比例の年金額に加えて、配偶者がいる場合の加算などがあります。
よくあるご質問
治療中ですが、申請できますか。
初診日から1年6か月を経過していれば、治療中でも申請できる場合があります。
働いていても申請できますか。
働いていても、仕事の内容や職場での配慮の状況を含めて総合的に判断されます。就労していることだけで、不支給になるわけではありません。
診断書を取る前に相談したほうがいいですか。
はい。診断書は取り直すと費用も時間もかかります。事前に、対象になるかどうかと、医師に伝えるべき内容を確認することをお勧めします。
まずはお気軽にご相談ください
社労士事務所アシストでは、初回相談を無料で承っています。初診日の確認、保険料の納付状況、診断書の内容を整理し、申請の見通しをお伝えします。受給できるかどうかは日本年金機構が判断するため、結果のお約束はできません。
しかし、お一人で抱え込むよりも、状況を整理するだけで、次にやるべきことが見えてきます。
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